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Backside storys
第3章 龍沢 玲司
いいのかよ、と呆れたけど、看護師に見つかったら面倒くさいんで…とこっそり、うがい用の小さい紙コップに、1センチずつくらい3つ注ぐ。
ひと口、くっと飲んでみた。

大吟醸はスッキリとした口当たりと、喉越し。でも鼻に抜ける香りは紛れもなく酒。初めて飲むから、良し悪しはよくわからなかった。

「美味いなぁ…」

「ええ。いい酒ですね。」

「ウチの孫、ええ仕事しよるでしょう。」

「ええ。いい、お孫さんですね。」

「…………」

俺は紙コップをくしゃっと握り潰して病室を出た。

爺さん…もう、このまま帰れないんだろうな…だから、今ココで呑みたいなんて言うんだ…きっと、爺さん自身も、先生も、解って…ポタポタと溢れる涙を袖で拭い、鼻を啜った。

そのまま夜は爺さんの家に帰る。入院に必要なモノやらなんやら、爺さんに言われたモノを探してまとめた。

入院費の精算に必要だろうから、と預金通帳と印鑑の場所も教えられて。
小さな箱に入った貴重品。信頼できる人に預ける算段してあるから持ってきてくれ、と言われていた。
爺さんの通帳、印鑑、俺の母子手帳と、小さな桐箱に入った、枯れた枝みたいな…枝ってか干物ってか…蓋の裏に、俺の生年月日…コレ、臍の緒…?
母親が残していったモノなのか…なんでこんなモンまで貴重品扱いしてんだよ…馬鹿じゃないか…ホント、馬鹿だろ…

また涙が止まらなくなった



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