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Backside storys
第3章 龍沢 玲司
帰れば忙しい毎日に飲み込まれ、悲しみに浸る間もないまま、春を迎えた。

その後、連絡先を交換した爺さんのアレコレ面倒を見てくれたおじさんから、葬式の香典から香典返しを差し引いた分だけ預かってあるが、初盆の供えに使っていいか、と連絡が来て、それでお願いした。

相続税の対象にもならない田舎の古い家だったから、相続税がかからないなら継ごうかな、とも思ったけど、古い家でも残してあれば固定資産税がかかるし、人の住んでない家はすぐ傷む、とそのおじさんに言われたから、とりあえず、不動産屋さんも交えて、更地にして売る代金で解体費用と処分費を賄う、という方法をとった。特に持ち出したいもんなんてないし…と言ったら、おじさんから、これくらい持っておいてやれ、と写真が送られてきた。
爺さんが撮った子供の頃の俺、一緒に出掛けた時にヒトに撮って貰った2人の写真…あぁ、こんな写真あったんだな、と思うものも、撮ったことを覚えてるものもあった。
最後の1枚は、若い頃の爺さんと、高校生くらいの、制服の女の子。
家の玄関の前で2人並んだ姿。コレが、俺の母親か…初めて見た…

一巡した写真を貴重品箱の中に仕舞った。もう見返すこともないが、まだ捨てずに取ってある。
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