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独占欲に捕らわれて*Regret
第5章 平穏へ
「お待たせ。時間が時間だから、手抜きだけど」
約30分後にそう言って紅玲がテーブルに並べたのは、天ぷらと味噌煮込みうどん。天ぷらは量は少ないながらも種類が多く、味噌煮込みうどんも具沢山だ。
「いただきます」
晶久は手を合わせると、さつまいもの天ぷらをひとかじりする。衣はからっと仕上がり、さつまいももホクホクしていてとても美味しい。店に出しても恥ずかしくない出来栄えだ。
「お前の料理は、相変わらず美味いな……」
「父さんがオレの料理褒める日が来るなんてねぇ」
しみじみと言う晶久に、紅玲はニヤリと笑う。内心嬉しくて仕方ないのだが、いつものくせで挑発的な態度をとってしまう。このままでは良くないと思いながらも、紅玲は美味しそうに箸を進める晶久を見てつい茶化したくなってしまう。
「前々から、お前の料理は美味いと思っていた。はじめて卵焼きを作った日なんか、こんなに小さいのによく出来たと褒めたいくらいだった。でもな、今まであんな態度を取っていたし、これから父親らしいことをできる自信なんてこれっぽっちもなくて褒められなかったんだ。褒めて懐かれて、変に期待されるのが怖かったんだ……」
うつむき加減で言う晶久の目には、うっすら涙が溜まっている。
「それを聞けただけで充分だよ。多分オレも、あの頃から褒められたとして、ちゃんと息子らしくいられなかっただろうから」
「紅玲……」
「あんまりいいものではなかったんだろうけど、あれでよかったんだよ。鈴宮親子は。そんなことよりさ、聞きたいことあるんじゃないの?」
しんみりしだした空気に耐えられず、紅玲はいつもの余裕のある笑みを浮かべた。
「黒川の件、どうやったんだ?」
僅かに怒気の孕んだ口調で言いながら、細めた目を紅玲に向ける。
「オレは大したことしてないよ。トーマが黒川の絶対をした時に録音して編集したものを、街にばらまいただけ。それを拾った誰かが、ネットにアップしたんだよ」
「まったく、お前ってやつは……」
悪びれる様子もなく言う紅玲に、晶久は頭を抱える。
約30分後にそう言って紅玲がテーブルに並べたのは、天ぷらと味噌煮込みうどん。天ぷらは量は少ないながらも種類が多く、味噌煮込みうどんも具沢山だ。
「いただきます」
晶久は手を合わせると、さつまいもの天ぷらをひとかじりする。衣はからっと仕上がり、さつまいももホクホクしていてとても美味しい。店に出しても恥ずかしくない出来栄えだ。
「お前の料理は、相変わらず美味いな……」
「父さんがオレの料理褒める日が来るなんてねぇ」
しみじみと言う晶久に、紅玲はニヤリと笑う。内心嬉しくて仕方ないのだが、いつものくせで挑発的な態度をとってしまう。このままでは良くないと思いながらも、紅玲は美味しそうに箸を進める晶久を見てつい茶化したくなってしまう。
「前々から、お前の料理は美味いと思っていた。はじめて卵焼きを作った日なんか、こんなに小さいのによく出来たと褒めたいくらいだった。でもな、今まであんな態度を取っていたし、これから父親らしいことをできる自信なんてこれっぽっちもなくて褒められなかったんだ。褒めて懐かれて、変に期待されるのが怖かったんだ……」
うつむき加減で言う晶久の目には、うっすら涙が溜まっている。
「それを聞けただけで充分だよ。多分オレも、あの頃から褒められたとして、ちゃんと息子らしくいられなかっただろうから」
「紅玲……」
「あんまりいいものではなかったんだろうけど、あれでよかったんだよ。鈴宮親子は。そんなことよりさ、聞きたいことあるんじゃないの?」
しんみりしだした空気に耐えられず、紅玲はいつもの余裕のある笑みを浮かべた。
「黒川の件、どうやったんだ?」
僅かに怒気の孕んだ口調で言いながら、細めた目を紅玲に向ける。
「オレは大したことしてないよ。トーマが黒川の絶対をした時に録音して編集したものを、街にばらまいただけ。それを拾った誰かが、ネットにアップしたんだよ」
「まったく、お前ってやつは……」
悪びれる様子もなく言う紅玲に、晶久は頭を抱える。