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独占欲に捕らわれて*Regret
第5章 平穏へ
日付が変わる手前、紅玲は冷蔵庫からサイダーを取り出し、氷の入ったふたつのグラスと一緒にリビングに持っていく。ぼんやりと外を見ている晶久の隣にグラスを並べると、彼は目を丸くして紅玲を見上げる。すべてのピアスを外し、黒髪に戻ったひとり息子の姿を再確認すると、目を細めた。
「やっと俺が知っている紅玲だ」
「反抗期が長くてごめんね」
紅玲は冗談めかして言いながら、サイダーを注いでいく。

「反抗期を終えたことに、乾杯」
乾杯、と小声で言ってひと口飲むと、晶久は可笑しそうに笑う。
「こういう時は、普通酒じゃないのか?」
「オレも父さんも、そんなにお酒強くないでしょ」
「なんだ、お前も弱いのか」
晶久は意外そうに言うと、サイダーをひと口飲んで息をつく。紅玲はそれを横目で見ながら、グラスを回して氷をカラコロ鳴らす。

「辛うじてカシオレとか呑める程度。そんなに美味しいとも思えないしね。ねぇ、ひと段落したら3人でご飯でも行こうよ。ドタバタしてて、チサちゃんのことまともに紹介できてないし」
「まさかそんなことを言ってもらえる日が来るとは思わなかったな」
ふたりは親子の時間を取り戻すかのように語り明かした。話してみると共通点が意外と多く、気が合うことが分かった。紅玲は幼い頃から晶久をつまらない堅物男で、フィクションは毛嫌いしているイメージを持っていたが、意外にも読書好きであることに気づいた。好きなジャンルや作家もいくつか被り、紅玲のコレクションに晶久が興味を示した。
紅玲が思い切ってシナリオライターをしているとカミングアウトすると、是非とも読んでみたいと言われ、嬉しさのあまり破顔させる。

先に眠ってしまったのは紅玲で、ソファに座ったまま寝息を立てる。いつも余裕の笑みを浮かべていても寝顔はあどけない。
「お前は優しいな……。親孝行なんて考えなくていいから、今まで苦労したぶん、幸せになってくれ」
晶久は穴だらけの耳に触れると、紅玲をそっと横に寝かせ、毛布をかけて寝室に行った。
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