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独占欲に捕らわれて*Regret
第5章 平穏へ
紅玲が目を覚ましたのは、翌日の昼過ぎ。食欲のそそる匂いで自分が空腹を自覚すると、ゆっくり躯を起こした。毛布がかけられていることに気づいて頬を緩めると、足音が近づいてくる。
「起きたか」
「おはよう、父さん今何時?」
「昼の2時過ぎだ。出前を取ったから、食べていくといい」
「んー、そうする」
立ち上がって伸びをするとスマホが視界に入り、千聖のことを思い出した紅玲は、彼女に連絡をしようとスマホを手に取る。何度も電源ボタンを押すが、ディスプレイは真っ黒なままだ。

「やっちゃった……。父さん、充電器貸してもらえる?」
「あぁ、少し待っていなさい」
振り返りながら声をかけると、テーブルの上にはうな重が2つ並んでいる。割り箸の袋から、そこそこの高級店であることが分かる。
晶久が充電器を取りに行っている間にうな重の前に座って待つことにする。

「チサちゃん、寂しがってるよねえ……」
本当は今すぐにでも帰って抱きしめたいが、こうも腹が減っていては事故を起こしかねない。
「ほら、持ってきたぞ」
「ありがと」
晶久から充電器を受け取ってプラグを差し込むと通知ランプが赤く灯り、一瞬だけディスプレイに充電中と浮かび上がる。

「おなか空いちゃったよ、いただきます」
「いただきます」
手を合わせてから大口を開けてうな重を頬張る。ほのかに甘みのあるご飯に、甘じょっぱいたれがよく合う。うなぎは肉厚で、ごはんより分厚いくらいだ。山椒がないのが実に惜しい。
ひと口目が胃に落ちると更に空腹が増し、味わう暇もなく次々と箸がうな重を口に運んでいく。
「そんなに急いで食べると喉に詰まるぞ。もっとゆっくり食べなさい。それとも、そんなに奥さんが恋しいか?」
どうやら晶久の目には、千聖に会いたいがためにかき込んでいるように見えたらしく。茶化すように言う。

「それもあるけど、かなりおなかが空いてたみたい」
「この時間まで寝ていれば、腹も空くか。だが躯に毒だ。そろそろゆっくり食べなさい」
晶久は麦茶を注いだグラスを渡しながら言う。紅玲は受け取ったそばから一気に麦茶を飲み干した。食道に詰まったうな重がすとんと胃に落ち、ようやく箸が落ち着いた。
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