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独占欲に捕らわれて*Regret
第5章 平穏へ
「ふぅ、やっと落ち着いてきたよ。ところで随分奮発したよねぇ。これ、結構高いでしょ? 確か、安くて5000円くらいだったかな? オレが泊まりに来たの、そんなに嬉しかった?」
先程の仕返しのつもりで茶化すように言う紅玲だが、晶久は真顔になってテーブルの下に手を入れる。テーブルの上にA4サイズの封筒が置かれ、中身を察した紅玲の表情が固くなる。
「ほんの一部だが、お前に返そうと思ってな。残りの額も必ず返す」
「いいよ、そんなのしまって。オレはあの日父さんを助けなかったことに後悔して、こうして動いたんだから。そのお金は自分のために使ってよ」
「そう言うのなら、御祝儀として受け取ってくれ」
相変わらず真顔で言う晶久に、紅玲は思わず吹き出した。
「あっはは、そんなに多額な御祝儀、聞いたことないよ」
紅玲は封筒を開けて札束をひとつ引っ張り出すと、3万円抜いて残りは全て晶久の前へ押しやった。
「これだけあれば充分」
「お前は欲がないな」
「結構欲深い方だよ? お金はたくさん持ってるからいらないってだけ」
そう言ってにっこり笑えば、晶久はしかめっ面をする。紅玲はそれに気づかないふりをして残りのうな重を平らげると、スマホの電源を入れながら立ち上がる。
「ふぅ、美味しかった。充電器ありがとね。また遊びに来るよ」
「あぁ、気をつけて帰るんだぞ」
見送ろうとする晶久を断って早歩きで車内に戻ってスマホを見ると、千聖からの不在着信が20件以上と、50を越えるLINEメッセージが来ている。ちなみに充電は14パーセント。1回電話するくらいならなんとか持つだろうと千聖にかける。紅玲からの連絡を待ちわびていた千聖は、ワンコールで出た。
「もしもし、チサ……」
『何時だと思ってるわけ?』
紅玲の言葉を遮った彼女の声音は、怒っているようにも泣いているようにも聞こえる。
「ごめんね、チサちゃん。寂しいよね。今から急いで帰るからさ」
『えぇ、是非ともそうしてちょうだい』
電話は一方的に切られ、紅玲は大慌てでスマホに充電器を差し込み、家まで車を飛ばした。
先程の仕返しのつもりで茶化すように言う紅玲だが、晶久は真顔になってテーブルの下に手を入れる。テーブルの上にA4サイズの封筒が置かれ、中身を察した紅玲の表情が固くなる。
「ほんの一部だが、お前に返そうと思ってな。残りの額も必ず返す」
「いいよ、そんなのしまって。オレはあの日父さんを助けなかったことに後悔して、こうして動いたんだから。そのお金は自分のために使ってよ」
「そう言うのなら、御祝儀として受け取ってくれ」
相変わらず真顔で言う晶久に、紅玲は思わず吹き出した。
「あっはは、そんなに多額な御祝儀、聞いたことないよ」
紅玲は封筒を開けて札束をひとつ引っ張り出すと、3万円抜いて残りは全て晶久の前へ押しやった。
「これだけあれば充分」
「お前は欲がないな」
「結構欲深い方だよ? お金はたくさん持ってるからいらないってだけ」
そう言ってにっこり笑えば、晶久はしかめっ面をする。紅玲はそれに気づかないふりをして残りのうな重を平らげると、スマホの電源を入れながら立ち上がる。
「ふぅ、美味しかった。充電器ありがとね。また遊びに来るよ」
「あぁ、気をつけて帰るんだぞ」
見送ろうとする晶久を断って早歩きで車内に戻ってスマホを見ると、千聖からの不在着信が20件以上と、50を越えるLINEメッセージが来ている。ちなみに充電は14パーセント。1回電話するくらいならなんとか持つだろうと千聖にかける。紅玲からの連絡を待ちわびていた千聖は、ワンコールで出た。
「もしもし、チサ……」
『何時だと思ってるわけ?』
紅玲の言葉を遮った彼女の声音は、怒っているようにも泣いているようにも聞こえる。
「ごめんね、チサちゃん。寂しいよね。今から急いで帰るからさ」
『えぇ、是非ともそうしてちょうだい』
電話は一方的に切られ、紅玲は大慌てでスマホに充電器を差し込み、家まで車を飛ばした。