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独占欲に捕らわれて*Regret
第1章 悪夢の出世街道
「うるさいな……」
眉間に皺を寄せて寝返りをし、この周辺に赤子がいる家がないことを思い出した。近所づきあいはほとんどしないものの、近くの家に小さい子供がいないことくらいは把握している。彼の記憶が正しければ、隣の家に中学生の男の子がいるくらいだ。
(どこの家だ? やたら近い気がするんだが……)
不思議に思いながらベッドから降りると、インターホンが聞こえた。晶久はコートを羽織り、玄関を開ける。

「君は……」
立っていたのは隣の家の中学生で、困り顔で晶久を見上げる。
「どうも、隣の家の者なんですけど、この赤ちゃん、この家の玄関前に置いてあって……」
少年は自分の足元に目をやりながら言う。晶久もそちらに目をやると、ゆりかごの中に赤子と書類がある。
「どこの子だ?」
「さぁ……? 俺は朝練ありますので、これで」
少年は逃げるように走り去る。

さすがに赤子をこのまま外に置いておくわけにも行かず、晶久は家の中に入れた。リビングに置いて赤子と一緒にあった書類に目を通し、絶句する。
「ふざけるなよ……」
なんとか声を絞り出してそれだけ言うと、赤子を睨みつける。

書類の正体はDNA鑑定書で、この赤子が晶久とルカの子供であることを証明している。しかもご丁寧に当時のふたりの毛根や爪まで同封されている。命名書まで一緒に入っており達筆で“紅玲”と書かれている。
「ふざけた名前だ」
吐き捨てるように言うと、書類を机に叩きつけた。すると紅玲が今までで1番大きな声で泣き叫ぶ。
「うるさい!」
晶久が怒鳴ると静かになるどころか、余計に大泣きされる。

晶久はため息をつきながら、ベビーシッターを雇おうと決心する。
「あのアバズレのガキなんか見たくもないが……仕方ない……」
晶久は同封されていた自分の毛根や爪をDNA鑑定してもらい、本当に紅玲が自分の子だと証明されたら、自分で育てようと決意した。自分の血が流れているのなら1流の人間に育て上げなければならない。そんな謎の義務感が生じ、できればこの鑑定書がデタラメであることを祈った。
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