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独占欲に捕らわれて*Regret
第2章 紅玲の憂鬱
「家っていうより、お屋敷って感じね……。あそこでふたり暮らしを?」
「小学生の頃は家政夫さんもいたし、父さんの部下の奥さんとかが出入りしてたけどねぇ。あれ?」
インターホンを押そうとする手を止め、紅玲はまじまじと表札を見る。
「どうしたの?」
「表札が違う……。鈴宮じゃない……」
千聖も表札を見てみると、紅玲の言う通り鈴宮の表札はなく、代わりに黒川という表札がある。
「借金あるしここにいないかもって思ってたけど、やっぱりちょっと寂しいなぁ……」
紅玲は表札に触れながら言う。その声に寂しさが滲み、千聖はどう声をかけようか迷っていると玄関が開き、中年男性が出てきた。
「君達、うちになんの用かね?」
中年男性は、ビール腹をゆっさゆっさと揺らしながらふたりの前に立つ。
「すいません、昔この家に住んでいた者です。オレは大学に通うようになってからここを出てひとり暮らししていたんですけど、父が住んでいたと思うんです」
「ほう、君があの鈴宮社長の息子さんか。妻も子供もいないなんて言っていたが、あれはやっぱり嘘だったのか」
中年男性は紅玲を品定めするように見回すと、ニヤリと笑った。
「えぇ、そうですよ。そういうあなたは、黒川コーポレーションの社長さんですよね?」
「あぁ、そうとも。立ち話もなんだから、お上がりなさい。自分の家だと思ってくつろぐといい」
「ちょっと……!」
黒川の嫌味ったらしい言い方に、千聖は声を荒らげる。
「チサちゃん、大丈夫だから。そうしたいのは山々ですが、急いでいますので。父が今どこにいるのか知りませんか?」
「今にも潰れそうなボロアパートにいるよ。ちょっと待っていなさい」
黒川は家の中に戻っていく。
「何よあれ、感じ悪い……」
「まぁまぁ……。黒川コーポレーションは、クレアシオンホールディングスの日陰にいた会社だからねぇ。父さんのこと、恨んでると思うよ」
紅玲は冷めた目で玄関ドアを見ながら言う。
クレアシオンホールディングスというのは、紅玲の父親である晶久が経営していた会社だ。様々な問題が一気に露呈し、数ヶ月前に倒産してしまった。ナンバー2だった黒川コーポレーションは、その影響で甘い汁を吸っている。
「小学生の頃は家政夫さんもいたし、父さんの部下の奥さんとかが出入りしてたけどねぇ。あれ?」
インターホンを押そうとする手を止め、紅玲はまじまじと表札を見る。
「どうしたの?」
「表札が違う……。鈴宮じゃない……」
千聖も表札を見てみると、紅玲の言う通り鈴宮の表札はなく、代わりに黒川という表札がある。
「借金あるしここにいないかもって思ってたけど、やっぱりちょっと寂しいなぁ……」
紅玲は表札に触れながら言う。その声に寂しさが滲み、千聖はどう声をかけようか迷っていると玄関が開き、中年男性が出てきた。
「君達、うちになんの用かね?」
中年男性は、ビール腹をゆっさゆっさと揺らしながらふたりの前に立つ。
「すいません、昔この家に住んでいた者です。オレは大学に通うようになってからここを出てひとり暮らししていたんですけど、父が住んでいたと思うんです」
「ほう、君があの鈴宮社長の息子さんか。妻も子供もいないなんて言っていたが、あれはやっぱり嘘だったのか」
中年男性は紅玲を品定めするように見回すと、ニヤリと笑った。
「えぇ、そうですよ。そういうあなたは、黒川コーポレーションの社長さんですよね?」
「あぁ、そうとも。立ち話もなんだから、お上がりなさい。自分の家だと思ってくつろぐといい」
「ちょっと……!」
黒川の嫌味ったらしい言い方に、千聖は声を荒らげる。
「チサちゃん、大丈夫だから。そうしたいのは山々ですが、急いでいますので。父が今どこにいるのか知りませんか?」
「今にも潰れそうなボロアパートにいるよ。ちょっと待っていなさい」
黒川は家の中に戻っていく。
「何よあれ、感じ悪い……」
「まぁまぁ……。黒川コーポレーションは、クレアシオンホールディングスの日陰にいた会社だからねぇ。父さんのこと、恨んでると思うよ」
紅玲は冷めた目で玄関ドアを見ながら言う。
クレアシオンホールディングスというのは、紅玲の父親である晶久が経営していた会社だ。様々な問題が一気に露呈し、数ヶ月前に倒産してしまった。ナンバー2だった黒川コーポレーションは、その影響で甘い汁を吸っている。