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独占欲に捕らわれて*Regret
第2章 紅玲の憂鬱
「その子は……?」
「初めまして、お義父さま。紅玲の妻の千聖です」
千聖の自己紹介に、晶久は目を丸くしてふたりを見る。
「まさかお前が結婚するとはな……」
「オレ自身も驚いたよ。ねぇ、父さん。家に上げてもらえる? 話がしたい。さっきも言ったけど、父さんを助けたいんだよ」
「お前に助けてもらう義理などない……」
晶久はそう言って目をそらす。紅玲にはそんな父の姿が、拗ねている幼子のように見えた。

「そんなこと言ってる場合? さっきの連中、闇金だよね? また殴られて骨折でもしたらどうするの?」
「お義父さま、私からもお願いします。話だけでも聞いてくれませんか?」
晶久は唸り声を上げるも、観念したようにため息をついた。
「……言っておくが、お茶も出せないぞ」
そう言って紅玲達に背を向け、キビキビと歩き出す。ふたりも置いてかれまいと早歩きでその後について行く。晶久は1階の最奥にあるドアを開けてふたりを招き入れる。

「お邪魔します」
部屋に入ると薄暗く、かび臭い。玄関のすぐ隣には台所があり、フローリングはボロボロで、タイルもヒビだらけだ。あとは4畳の部屋にちゃぶ台があるだけの、必要最低限のスペースしかない。
「座布団もなくてすまないな……。お嫁さんもいるというのに、祝儀すら出してやれん」
晶久は窓際に座ると、申し訳なさそうに項垂れる。
「そんな、気にしないでください」
「まずは自分の心配をしなよ。今はどんな生活してるの? 収入源は?」
紅玲はちゃぶ台に肘をつき、老け込んでしまった父をじっと見つめる。

「今は日雇いバイトをしながら暮らしてるが、家賃とガス代を払うのがやっとで、水と電気は止まってる……。近くの公園で、必要な水を汲んでどうにかしているんだ。あとは、さっきお前が見た通りだ。借金取りに怯えながらの生活さ……」
晶久は力なく笑う。
「そっかぁ、それは大変だったね」
紅玲はそう言いながら、財布を開ける。無造作にお札を何枚か取り出すと、ちゃぶ台の上に置いた。
「はい、食費。今は手元にこれくらいしかないから、とりあえずこれでなんとかして」
「いいのか……?」
晶久は涙が溜まった目で紅玲を見つめる。
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