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独占欲に捕らわれて*Regret
第3章 真相探求
「料理するのに最低限は着たけど、これじゃあまだオレだって分かっちゃうからね」
紅玲はそう言って2階へ行く。
「どういうこと?」
千聖は首を傾げて、紅玲が出ていったドアを見る。

「千聖」
10分後、落ち着いた声で名前を呼ばれて顔を上げると、スーツを着こなした紅玲が立っている。黒のウィッグを被り、フチなしメガネをかけたその姿は、まるで別人だ。
「一瞬誰かと思ったわ……。でもなんで変装なんかするわけ?」
「父さんのところに記者が来てたし、そいつはオレの顔を知ってる。あの時は借金取りのフリしてたから、またあの記者に遭遇したら厄介だろ? 何より契約する時も、こっちのほうが好印象だからな」
口調まで変わった彼に、千聖は呆然とする。

「千聖? ぼんやりしてどうした?」
紅玲は怪訝な顔をして彼女の顔をのぞき込む。
「本当に違う人みたい」
「今のうちに練習しとけば、いざとなった時ボロが出ないだろうからな。千聖からしたら不自然だろうが、我慢してくれ」
「なるほど、そういうことね。不思議な感じするけど、大丈夫よ」
「千聖が理解ある人でよかった。じゃあ行こうか」
「えぇ」
ふたりは外に出ると、紅玲の運転で千聖の車に乗る。これも例の記者対策だ。

駅ビルの前で、車が停車する。
「変な男には気をつけるんだよ? 何かあったら、遠慮せずすぐに連絡して」
「えぇ、分かったわ。そっちも気をつけて」
「ありがとう、それじゃあ、また」
千聖が車から降りてドアを閉めると、紅玲はすぐに発車させた。

「もう、過保護なんだから……」
千聖はバッグに触れながら苦笑する。中には護身用にと紅玲に押し付けられたスタンガンと催涙スプレーが入っている。
「さてと、まずは重たいものから片付けちゃいましょうか」
千聖は駅ビルの地図を見ながら、家電量販店を探す。
紅玲は晶久を、ウィークリーマンションに避難させるつもりでいる。紅玲が滞納された晶久の公共料金を支払ったり、ウィークリーマンションを借りに行ったりしている間に、千聖は生活に必要なものを買い揃える。大半のウィークリーマンションには炊飯器がないということで、まずは炊飯器から買うつもりでいる。
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