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独占欲に捕らわれて*Regret
第4章 反撃開始
「まずは台所に運んで、ご飯食べさせたげる。何食べたい?」
「ミルクがゆ頼めるかしら?」
「もちろんいいよ。それじゃ、行こっか」
紅玲は千聖をお姫様抱っこすると、台所に行って彼女の指定席に座らせる。黒い前掛けをつけると、台所に立って調理を始める。ふたつの鍋を出したことから、ミルクがゆ以外も作るつもりでいるのだろう。

(いったい何を作るのかしら?)
小気味よく聞こえる包丁の音に、千聖は期待しながら紅玲の背中を見つめる。
「あ、そうだ」
紅玲は思い出したように言うと、冷蔵庫から小箱と麦茶を取り出し、小箱を千聖の前に置いた。

「何これ?」
「避妊用ピル。絶対そのうちやらかすと思って、買っといたんだ。飲むかどうかはチサちゃんの判断に任せるよ」
紅玲は麦茶を注いで千聖の前に置くと、調理を再開させる。

(子供か……。きっと可愛いんだろうけど……)
千聖は難しい顔をしてピルを見つめる。子供は嫌いではないが、欲しいかと聞かれるとうまく答えられない。子供がいればにぎやかで楽しい家庭になるだろうと思う反面、精神的虐待を受け続けていた自分にちゃんと子育てが出来る自信がない。

「難しい顔して、どうしたの?」
ひと通りの調理を終えた紅玲は、千聖の向かいの席に座る。
「紅玲……。私、まだよく分からないの……。子供が欲しくないってわけじゃない、とは思うの……」
「ずいぶんあやふやだね」
「子供は嫌いじゃないし、きっといたら可愛いと思う。でも、自信がないのよ……。まともな環境で育てられなかった自分に、ちゃんと子育てができるのかって……」
千聖はピルに目を落とすと、ため息をついた。

「それを言ったら、オレだってそうだよ。親からは愛されずに育ったからねぇ。だけど、そんな人達が必ず虐待をするってわけじゃない」
「それは、そうだけど……」
紅玲は鬱々とした顔でピルを持つ千聖の手を、両手で包み込む。
「前にも言ったけど、オレはこのままチサちゃんとふたりきりでもいいし、子供が出来たら全力でサポートする。オレ達の子なんだから、そうするのが当たり前だしね。それに、何も今すぐそれを決める必要は無いんだよ? 迷うくらいなら、今は作らなくていいんじゃないかな」
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