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ハイパーテクニックおじいちゃん
第3章 イチョウの木
清掃のおじさんだ。
いつものように目が合うと、ニコリと挨拶をしてきた。
「こんにちは。あれ、今日はいつものお兄ちゃんと一緒じゃないんだね」
その言葉に、急激に悲しみが深くなり、涙腺が緩んだ。
美里が大粒の涙を流した事で、おじさんは慌てている。
「おぉ、ごめんよ。余計な事を言ってしまったねぇ」
掃除用具もそのままに、美里に近づいてきた。
「こちらこそ、ごめんなさい。大丈夫です」
「大丈夫じゃないだろう。どうしたんだよ」
心配そうに話しかけてくる。
「いや、彼とは別れただけで……」
『別れた』と言葉にした事で、余計に悲しみを誘い、さらに涙が止まらなくなった。
「おぉ、そうだったのかい。こんな可愛らしいお嬢さんを……罪な男だねぇ」
可愛らしい⁉︎
美里は、同年代の男性からは、決して可愛らしいと言われる様なルックスではない。
グレイヘアーの初老のこの男には、若いというだけで可愛いらしく映るのだろうか。
そんな事を考えていたら、少し涙が治った気がした。
「さぁ、涙を拭いて」
おじさんがポケットからティッシュ取り出し、美里に渡す。
「辛い事は吐き出してしまった方がいい。おじさんで良ければ話しを聞くよ」
何だかそう言われたら、このおじさんに全てを話して、スッキリしてしまいたい!……そんな気分になってきた。

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