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花タクシー【完結】
第4章 花タクシーに乗車す
花タクシーに乗車す




その怪しい送迎ゲート(?)の前に立つと、先頭の白い車(プリウスだ!)の助手席のウインドウが下がって、30代らしきショートカットの、いかにもチーママさんっぽい女性が愛想よく声をかけてきた。


「今日は災難でしたね。どちらまでお帰りですか?」


「○○町の飛鳥通り付近です」


「まあー、キヨエちゃんの家と近いんじゃない?」


その女は後部座席を振り返って、運転手側に座ってる真っ赤なスーツの茶髪娘(絶対10代!)にフった。


「やだー、すぐそばですよ、私。奇遇ですねー!」


だって…。


***


「どうですか?普通のタクシーより高くつきますが、両手に花で自宅までご一緒しますよ。もちろん、花タクシー業界の標準サービス込みです。乗りませんか?」


「最初に金額は決めときたいですね。それ以上は絶対払わない。むろん、自分が車内で同意したものは別で。ズバリいくらです?」


「そうですね。今日はこういった鉄道トラブルのかき入れ時なんで、お客さんのお送り先なら19980円ですが、1名同方向下車がいますんで、缶ビール1本付きで17000円にします。いかがです?」


「自分、今日の残業代とタクシー手当で15000円なんですよ。それで収まれば列を待たずに自腹切らないで、きれいどころとご一緒させてもらえる。それなら、乗りますよ」


「じゃあ、自腹1000円ご負担でどうですか?ワンオプション無料でサービスしますよ」


「わかりました。乗ります」


かくして、私は花タクシーに乗車するとことなった…。


ちなみに、15000円は本当のことで、要するに、自分の持ちだしはジャスト1000円ということだったのだ。
逆に、会社からの手当てがなかったら、この花タクシー体験はあり得なかっただろう。


***


「ああ、タカコちゃん、お客さんを…」


「あ…、はい!」


ここで後部座席の助手席側に座っていた、30代半ばくらいのちょっと地味めの女性が車外に降りて、オレをエスコートしてた。


「ああ、お客さん、じゃあ中へどうぞ…」


「すいません‥」


オレは後部座席の真ん中に座った。
正に両手に花…。


まあ、席に着いた瞬間、女性たちの香水と、タバコとほのかなアルコール香が鼻に押し寄せて、完全に”飲み屋”のボックス感覚だった。





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