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永遠
第15章 ふたたび
その部屋は、生活感のない、装飾も何もないこざっぱりとした部屋であった。

おびただしい数の本の山だけが村瀬らしさを醸し出してはいたが、家庭の匂いは一切持ち込まれていない事が、碧を安堵させた。

「ここにいると落ち着くんだ。誰もここには入れない。」

「え?」

「うん。家族も、友人も、学生もこの部屋には入れない。でも…」

「…」

「君は別だ。碧。僕は君がここに来てくれる日を、ひたすら待ち望んでいたんだよ。」

コーヒーでも、と豆をセットしていた村瀬の手がぴたりと止まり、碧の目を凝視した。

「先生…私もこの10年、あなたを、あの日を忘れたことは一度もありません。」

「…おいで、碧。」

村瀬は静かに碧の手を取り、まるでバージンロードを娘と歩く父親のように恭しく、碧をベッドルームへと誘っていった。
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