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永遠
第8章 嵐の後
文字通り、屍のようになって村瀬と碧は部室の冷たい床に、一枚の毛布にくるまったまま倒れ込んでいた。

時間が永遠に動きを止めたかのようだった。

「…碧」

最初に声を発したのは村瀬だった。
碧はまだ現実が信じられないような瞳でぼんやりと空を見据えていた。

村瀬の手がゆっくりと動き碧の髪を撫でる。

とふいに…「ごめんなさい」と碧がつぶやいた。

「なぜ君が謝るの?僕は後悔してない。君がこの大学に入学し、僕のゼミに入った時から、君から目が離せなかった。」

「先生は、皆に尊敬されてて、人気があって…私はただ憧れていたんです。先生が結婚している事もお子さんがいる事も知っ…」

話し続ける碧の口を村瀬の口がふさいだ。

「何も言わなくていい。どんなペテン師に思われようと僕は今君を心から愛してる。それが全てだ。」

無意識に碧の頬に涙がつたっていた。
嬉しさなのか哀しみなのか、そのどちらでもないのか。

村瀬はその涙をすくうように碧の頬に唇をはわせた。

「…可愛い」

村瀬の手が髪に頬に胸に腰に、滑らかに上下する。

それはついさっきまで、とりつかれたように動いていた手とは違う生き物のように優しく、かつさらに熱を帯びたものだった。

お互いを「知った」という事実が、さらにお互いの身体に変化を与え、磁石の+−のように引き合う力を増していた。
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