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蕾は開き咲きほこる
第5章 楽しい時間
「そう言えば光春くん。今日は藤棚を見に行く予定だって言ってたわよね」
残りの写真を見ていると、たった今まで言い争いをしていたとは思えないほど、いつもの感じで課長に話しかけていた。
それは課長も同じだった。
「そうなんですよ。昨日までは晴れの予定だったんですけどね。急遽雨になったので桜子さんの店に足を運んだんです。写真を見せてほしいってメールも来てましたから」
「もしかして藤棚ってあれ?」
桜子さんが指をさしたほうに視線を向けると、額一杯に咲き誇る藤の写真が飾ってあった。
「そうですよ、良くわかりましたね」
「分かるわよ。藤棚って行ったらあそこしかないから――あの写真も、5年前のよ」
「もう5年前ですか、月日が経つのは早いですね」
桜子さんの言葉に課長は寂しそうに眼を細めて手に持っていたカップに口をつけ、桜子さんも課長の言葉に一瞬寂しそうな表情をした。
その写真にどんな思い出があるのか分からないけど、そこには私が入る隙がないような、そんな感じだった。