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蕾は開き咲きほこる
第5章 楽しい時間
「すいません。そろそろ帰ります」
外が薄暗くなっても雨足がおさまることはなかった。
それどころか雷も鳴り始め、スマホのアプリで雨雲を確認しても止む気配はい。
帰ることを告げると、桜子さんは心配そうな顔をしながらカウンター内に下がっているカギを課長に渡した。
「私の車使って良いから送ってあげて」
「えっ、いいです、いいです。駅はすぐそこですし」
そんな事まで課長にお願いできないと慌てる私に、桜子さんは大丈夫だからと聞き入れてはくれない。
「せっかくここまで来てくれたのに一人で雨の中を帰らせる事なんてできないわよ。私が送って行ければ一番いいんだけど店を閉めるには早いから光春くん。お願い」
「そうですね。暗くなってますし送って行きますよ」
「いえ、大丈夫ですから」
課長にも直接断りを入れると、課長はチラッと桜子さんを見て困った顔をした。
「もう分かっていると思いますが桜子さんは頑固ですからね。聞き入れなければ帰らせてもらえませんよ」