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蕾は開き咲きほこる
第6章 私の頑張り
「可愛く、してもらって、いいですか?」
夏が終わり始めた頃、伸ばしっぱなしの髪を切ることにした。
「なになにぃ?可愛くしてって――もしかしてデートなのぉ?」
私の注文に黄色い声を上げて女性らしい動きをする美容師のマリンさんはこう見えても男だったりする。
見た目は男性なのに心配りや優しさは普通の女性以上で、男性が苦手な私でも唯一普通に話せる人だった。
「でっ、デート???ち、違います、そんなんじゃ、ないですよ。ただ出かけるだけでっ、違いますから!」
「そうなの?でも可愛くしてって事は少なからず好意を持ってる相手って事でしょ?」
「好意、だなんて、そんな……」
マリンさんの言葉に恥ずかしくなって下を向くと、顎に手を添えて顔をあげさせられ、真っすぐな視線を鏡の中の私に向けた。
「どういう事か分からないけど、これから可愛くなろうって子が下を向かないの。私がとびきり可愛い女の子に変身させてあげるから堂々としてなさいよ」