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蕾は開き咲きほこる
第7章 気づかされる想い
「本当に誤解しないで。私と光春くんの間には何もない。ましてや光春くんが私に恋愛感情を持つことはないの。あるとすれば――今は亡き親友への友情の証だけよ」
必死な弁解と今は亡き親友と言う言葉に、逃げ出そうとしていた足が止まった。
「亡き、友人?」
私の言葉に桜子さんはコクリと頷いた。
「ええ、そうよ。亡き親友との最後の約束……少し昔話でもしましょうか?だから座って」
先ほどまでにこやかで明るかった桜子さんの表情は曇り、今にも泣きだしてしまいそうに歪んでいた。
私が椅子に座ると桜子さんは少しの間天井を見つめ、そしてゆっくりと一度目を閉じて深呼吸をした。
「私が、結婚していたことは聞いてる?」
「結婚?」
それは初耳で、それにお店で会った限りでは旦那様の影なんて微塵もなくて独り身を楽しんでいるとばかり思っていた。
「その様子からは何も聞いていないのね。まぁ、光春くんがベラベラ喋るとも思わないけどね」
先ほどと打って変わって明るく笑う桜子さんは懐かしそうに話してくれた。