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蕾は開き咲きほこる
第8章 冬空の下で
「何を馬鹿なことを言ってるんですか。私も坂上さんも本気で桜子さんの事を心配して来てるんですよ。それが分からないあなたではないでしょう」
諭すように言えば桜子さんは落ち着ていくれる。
「それは……分かってるわよ、分かってるけどね、ふたりを見てたら歯痒いのよ。毎週一緒にお見舞いに来てくれるほど仲いいならこんな所に来ずにデートしてほしいって思うじゃない。――光春くんは汐里ちゃんとデートするのイヤなの?失礼な事だって思ってる?」
少し落ち着いたかのように見えた桜子さんは、それでも話をもとに戻して私と課長をデートに行かせようと課長に詰め寄った。
「どうなの?光春くんは大馬鹿なの?こんな可愛い子とデートするのイヤ――」
「桜子さん、変な事を聞かないでください!課長に迷惑――」
「イヤだとは思っていませんよ」
課長に言い寄る桜子さんを止めようと間に入った瞬間、課長の静かで優しい声が室内に響き渡った。