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蕾は開き咲きほこる
第8章 冬空の下で
「やっぱり光春だった」
不意に声をかけられ振り向くと、そこには課長の同級生の悦子さんが立っていた。
「悦子??どうして、ここに?」
「どうしてって、光春を見つけたから声をかけたんじゃない。まさかこんなところで会えるなんて思ってもいなかったわよ」
悦子さんは勝手に課長の横に座り、私が傍にいることが分かっていながら無視するかのように話し始めた。
「この前も思ったけど、私と光春って偶然が続くよね。こんな場所で会えるなって運命だと思わない?」
「何を言ってるんですか……」
「だってそうじゃない?約束もしていないし、ましてや普段からくるような場所じゃないのに出会ってしまう。これって運命っていうんじゃないの?」
悦子さんは課長の腕を絡めとり、私から引き離すかのように自分の方に引き寄せた。
その瞬間、握りしめていた課長の袖は簡単に離れていった。
その手を見つめると、今まで楽しかった気持ちが急に萎んだ様になくなっていった。