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蕾は開き咲きほこる
第8章 冬空の下で
「せっかく会ったんだから飲みにでも行きましょうよ。この辺りに来るの初めてだからどこかいいお店に連れて行ってよ」
課長に自分の身体を預けながら甘い言葉で誘う姿は妖艶で、私にはない魅力に課長が連れていかれそうで嫌だった。
だけど課長は、悦子さんの腕を放して距離を取って断ってくれた。
「見ての通り、私は彼女と食事をしている最中ですよ」
「でもメインは終わってるんでしょ?後はデザートだけだからいいじゃない」
やんわりと断る課長の言葉を気に留める様子もない悦子さんは自分のペースで課長を飲みに連れだそうとする。
「あなた……光春の部下だったわよね。毎日会社で会えるんだからいいわよね。私なんてこの機会を逃すといつ会えるかわからないんだから譲ってよ」
初めて私に視線を向けた悦子さんは、可愛らしく「お願い」と口にするけどその目は笑ってなくて怖かった。
「何も言わないってことはOKって事かしら?――彼女も良いって言ってくれてるんだから行きましょうよ」