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蕾は開き咲きほこる
第9章 キスの嵐

「かっ、課長?どうしてここに?」

朝から課長に会えるとは思わず急いで駆け寄ると、課長は私の手を取って朝の挨拶かのようにその手にキスを落とした。
驚いて目を見開く私と違って課長はいつもと変わらない。

「覚えていなんですか?」

「えっ、覚えて?」

課長がいることと、手の甲にキスをされて戸惑っている私の姿に課長はクスッと笑う。

「そんな気はしていましたけどね。――ここまで迎えに来るので一緒に会社に行きましょうと話したんですよ。仕事終わりで一緒に帰れる保証もありませんし、社内でゆっくり話すこともできない。汐里と一緒にいられる時間と考えたらこの通勤時間が一番かと思ったんです」

何か大事な話をしていた気がしていたのはこの事だったらしい。

「迷惑……でしょうか?」

「迷惑じゃないです。でも、それでは課長が遠回りになります」

一緒にいられる時間を作ってくれるのは嬉しいけど、課長がここまで来るということは遠回りになる。
私の家と課長の家は会社がある駅の反対側に位置している。
朝の忙しい時間に、いつも降りる駅を通り越してここに来てもらうのは申し訳がない。

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