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蕾は開き咲きほこる
第9章 キスの嵐
「汐里?」
課長の言葉にハッと我に返った私は、今考えていたことが恥ずかしくて課長の視線から逃げるように課長の胸に顔を埋めた。
「どうしたんですか?」
「なっ、なんでもないです」
こんな淫らな事を考えていると思われたくなくて何でもないフリをする。
だけど、髪の毛を撫でられる優しい手に、すべてを見透かされているんじゃないかと怖くなる。
もし、こんな事を考えていると分かったら課長はどう思うんだろう。
呆れられて軽蔑されて、好きだと思ったのは錯覚だったと、昨日の事はなかったことにしてほしいと言われるんじゃないかと怖くなった。
それでも、ちらりと課長の顔を見れば口元に視線がいってドキドキする。
それは電車を降りてからも、仕事をしていても同じで、同僚と話している課長の口元ばかりに目がいって邪な事ばかりを考える。
だから仕事では初歩的なミスを連発し、水木さんに久しぶりにイヤな顔をされた。