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蕾は開き咲きほこる
第10章 クリスマス

「桜子さんの夫……末弘(すえひろ)が生きていた時は毎年お店でクリスマスを祝っていたんです。桜子さんが飾り付けをして末弘が作った料理で乾杯をする。最後にケーキとコーヒーを飲んで帰るのが毎年のことでした。」
光春さんは懐かしそうに親友の末弘さんの事を話し始めた。
桜子さんからご主人の話を聞いた時、桜子さんと光春さんとの関係を聞いたことだけは伝えてある。
その時は「そうですか」の一言で終わったから、光春さんの口から末弘さんの事を聞くのは初めてだった。
「それは末弘が亡くなってからも続いていました。今でこそ店に出せる料理を作れるようになったんですが当時は食べられたものではなかった」
「桜子さんがですか?」
「ええ。卵焼きを作れば必ず殻が入る。煮物を作れば濃すぎるか甘すぎる。何かを焼けば焦げさせる。といった感じで料理は全くでしたよ。想像も付かないでしょう」
クククッと口元を手で押さえながら笑いながら話してる。

