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蕾は開き咲きほこる
第2章 本来の私

「どっかで飲んで帰らない?」
「これから彼氏とデートなんだ。彼氏の会社も今日がノー残業デーだからラッキー」
「見たい映画があったんだよね。レディースデーだから行かない?」
それぞれが定時で上がれたことに高揚し、アフターファイブを謳歌しようといつも以上に華やいだ声を上げて帰っていく。
その中には、私に仕事を指示した水木さんも入っていた。
「たまには飲んで帰らないか?」
水木さんは他の同僚に声をかけ私の後ろを通り過ぎて行く。
「だな。ほかの同期にも声かけてみるか?」
「それも面倒だよな。下に降りたら誰かに会うだろうから会ったやつに声かけようぜ」
水木さんは挨拶もなく通りすぎて行った。
手伝おうか?大丈夫?という言葉がないのは今に始まったことではないから期待はしていない。
口答えもしなければNOとは言えない性格は社内では有名だからこそ、面倒な仕事は押し付けられてしまう。
分かっていても言い返せないのが私。
変えたくても変えられない性格の一つでもあった。

