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蕾は開き咲きほこる
第2章 本来の私
「あのっ、それは明日のお昼までに必要な書類でっ」
「見ればわかります。ですが今日はノー残業デーです。申請をしていなければ帰りなさい」
「でもっ!」
「キミが心配する必要はないと言ってるんです。人に自分の仕事を押し付けて帰る彼が悪いんですからキミが気に病むことではない」
課長は私の言いたい事を理解してくれず、目の前に私がいるというのに仕事を始めた。
カタカタとキーボードの音が響く中、水木さんから頼まれた仕事が気になり、かと言って課長に何かを言えるわけでもなく動くことができなかった。
「そろそろ出ないと最終電車に間に合わないんじゃないですか?水木くんの仕事なら問題はないので今日は帰りなさい。これは課長命令です」
課長はパソコンから目を離すことなく私に帰ることを促し、時計を確認すれば終電が差し迫っていた。
それに、課長命令だと言われると帰らないわけには行かない。
「分かりました……お先に失礼します」
「ああ、気を付けてかえりなさい。お疲れ様」
「はい、お疲れ様でした」
パソコンに視線を落としたまま顔を上げない課長に頭を下げて会社を後にした。