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蕾は開き咲きほこる
第17章 独占欲
『羽間くんが出勤したようですね……』
暫くして私のもとに戻ってきた光春さんは小さな声で誰がいたのか教えてくれた。
時計を見ると羽間さんが出勤するには早い。
羽間さんだけではなく他の社員が出勤してくるには早すぎる時間だった。
『どうしよう……』
咄嗟に頭に浮かんだのはそのことだった。
朝早くから光春さんと応接室にカギをかけていたなんて知られるわけにはいかない。
青ざめていると、光春さん私の顔を覗き込むみ人差し指でメガネの淵を押し上げてニッコリと笑った。
『大丈夫ですよ。落ちついて行動すれば問題ありません。ですからまずは落ちつきましょう』
ポンポンと背中を軽く叩かれ、光春さんの落ちついた言葉に自然と落ちついていった。
『どうしたら、いいですか?』
『そうですね……まずは私が先に出て羽間くんの気を引きます。その間に汐里は応接室を出て私と汐里の分のコーヒーを入れて行ってください。私は応接室で仕事をしていて、汐里はコーヒーを淹れに行ってくれた。そういうことにすれば問題ないと思います』
だから大丈夫だと言った光春さんは、応接室のカギを静かに開けて出て行った。