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蕾は開き咲きほこる
第20章 旅行
だけど、ここは外で人通りがまったくないわけではない。
遠くでは私たちのように遊歩道を歩いているカップルもいれば、小さな子供を連れた家族もいる。
もっと深くキスをしたいと思っても人の目が気になり欲望より理性が勝る。

「あのっ、人がっ」

息をするために唇が離れた瞬間、光春さんの胸に手を置いて距離を取ると少し寂しそうな表情をする。

「汐里?」

「人がっ……小さな子供もいるし」

「湖の中の魚に夢中になって私たちの事など気にしていませんよ」

ちらりと子供のいる方に視線を向けると、先ほどまで歩いていた家族は子供が覗き込む湖に視線を落としていた。

「それでもっ、いつ顔をあげるか――」

分からないから!と言おうとする言葉を遮られ、手を取られて遊歩道から逸れて木々の中に入っていった。
普段は人が立ち入らないのか草木がうっそうと茂っていて足元が悪い。
そでも奥に奥に入っていくと、木々は重なりあって遊歩道が見えなくなった。

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