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蕾は開き咲きほこる
第3章 課長の素顔
慌ててダウンを羽織って椅子に座れば課長はクスクスと笑い、先ほどと同じタンブラーのようなモノで豆を挽き始めた。
「それもこだわりですか?」
「そうですね。私の趣味の一つでもあります。こんな贅沢な場所でインスタントは味気ないですから自然と良いモノをと思ったら豆からコーヒーを作るようになりました。まぁ、これはキャンプ用の簡易なモノですけどね」
「簡易ですか?」
豆を挽いたことがない私には何のことだかさっぱりわからない。
それを正直に言うと丁寧に教えてくれる。
「これは一体化になったモノで普通だったら豆を挽くミルにドリッパーとフィルターが必要なんですが、これでしたらミルもドリッパーもお湯を注ぐドリップマグもついてるので車ではない時に重宝するんです。まぁ、今日はこれがありますからドリップマグは使いませんけどね」
焚火の上で沸かしている口の細長いヤカンでお湯を注ぎ始めると、先程と同じ良い匂いが漂いだした。