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蕾は開き咲きほこる
第3章 課長の素顔

「課長は、星空ではなくてこの景色を見るために居たんですね」

課長がこの場所にテントを張ってまで居た理由。
星空を見るためにいると思ったけど、本当はこの景色を見るためだけにテントを張り寒空の中待っていたのだと分かった。
それほどまでして見る価値のある風景だと思い、その想いを言葉にした。

「そう言ってもらえると寒空の中、キミを待たせた甲斐がありましたね。ここはこの時期だけではなく四季を通して様々な顔をみせてくれるんです。春は桜、夏は緑、秋は紅葉。それをカメラで撮るのが好きなんです」

大事そうにカメラを撫でる課長は、本当に写真を撮るのが好きなんだと伝わった。

「だから本格的なカメラなんですね」

「私の唯一の趣味なんですよ。私は人と喋るのが苦手なんです。仕事の事になると話すことはできますが、プライベートになると言いたいことの半分も言葉にできない。そんな私の表現方法の一つなんです。私の撮った写真一枚で私の思いを分かってもらえたらと――夢のまた夢なんでしょうけどね」

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