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蕾は開き咲きほこる
第24章 それぞれの一歩
「桜子、一緒に食べよう!きっと、末広さんもそれを望んでる」
長野さんもこのケーキの意味を理解してるのか、桜子さんの手を握って優しく言葉をかけていた。
桜子さんは長野さんの言葉に頷いて、光春さんの言った通りクリームがいっぱいのショートケーキを手に取っていた。
長野さんはロールケーキ、光春さんはチーズケーキ、私はレアチーズケーキを手に取り、4人で末広さんが最後に買いに行ったお店のケーキを口にした。
誰も何も話さない中、桜子さんだけが何度も何度も「おいしいわね」と言葉にし、最後の一切れを大切そうに口にした瞬間、それまで我慢していたのか、大粒の涙をいくつも零しながら声を抑えて泣き始めた。
長野さんは何も言わずに桜子さんを引き寄せ、桜子さんは長野さんの腕の中で静かに泣き続けた。
そんな桜子さんを見ていると自然と涙が頬を伝う。
どうしたらいいのかと光春さんを見ると、光春さんは静かに頷いた後に私の手を引いてその場を後にした。