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蕾は開き咲きほこる
第3章 課長の素顔
「あらっ?先程の……露天風呂には行かれなかったのですか?」
ロビーに駆け込むと、女将さんが私に気が付き言葉をかけてくれた。
「えっと、あの……先客が……」
彼女たちの事を言っていいのかと言い淀んでいると、私の数少ない言葉で察してくれた。
「本当にごめんなさいね。普段この時間は従業員が入ることもあるの。今日は光春くんが来てるから使用禁止にしてたのに行き渡ってなかったのね。本当にごめんなさい」
深々と頭を下げる女将さんにあたふたする私。
はたから見たら女将さんが悪く見られるんじゃないかと気が気じゃない。
「お詫びと言ってはなんですがコーヒーでもいかがですか?」
頭を上げた女将さんはフロントの傍にあるドリングバーに歩いて行く。
だけど、持ってきてくれたのは暖かなお茶だった。
「光春くんと一緒だったのならコーヒーは嫌というほど飲んだと思うので」
一緒にいないのに全てを知っているような素振りに、なぜだかチクリと心が痛んだ。