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遠き記憶を染める色【完結】
第6章 潮にイカされた少年
潮にイカされた少年
それは一体、どのくらいの時間だったのだろう…。
文字通り潮に呑み込まれ、流れに任せるほかなかった少年には、判断の術がなかった。
だが、サダトと海との特殊な時間とそれを共有する空間は、彼自身の深淵に刻み込まれていった。
***
「サダ坊!しっかりしろ!」
「サダト兄ちゃん、目を開けて!お願いだから…。おじちゃん、お兄ちゃん、目を覚まさないよー!」
「おそらく海水を大量に飲み込んだんだろう」
磯彦は人工呼吸の要領で、サダトの口から海水を吐き出させていた。
サダトが意識を取り戻したのは、船が陸に着く直前だった。
「なら、オレはこのまま有波先生んとこへサダ坊を連れてくからよう、流子を頼むわ」
「わかった。本家には病院から電話入れるようにな。皆、心配してるはずだから」
磯彦は黙ってうなずくと、サダトをおぶって、漁港に駐車してあった軽トラに乗り込み、約3キロ先の有波病院に直行した。
流子は源汰に手を引かれ、心配そうに見送っていた。
***
「ああ…、磯彦さん、そう心配はないようじゃ。外傷はいくつもあったが、おそらく魚が接触した擦り傷とアザじゃろ。まあ、経過は看る必要はあるが、このまま大岬におるんなら、何かあれば連れてきなさい。ただし、あの子が埼玉の家にもどったら、念のため、あっちの大きい病院に診せた方がいい」
「わかりました。ふう‥、しかし、よかった。もう少し遅かったら浦潮に持って行かれてましたよ」
「うむ…、やはり大岬の潮は怖いのう…。それで…、あの子の服を脱がせて気づいたんだが、どうやら射精したようだ」
「???」
勝彦はすぐにはこの老医師の言っている意味が読み取れなかった。
***
それは一体、どのくらいの時間だったのだろう…。
文字通り潮に呑み込まれ、流れに任せるほかなかった少年には、判断の術がなかった。
だが、サダトと海との特殊な時間とそれを共有する空間は、彼自身の深淵に刻み込まれていった。
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「サダ坊!しっかりしろ!」
「サダト兄ちゃん、目を開けて!お願いだから…。おじちゃん、お兄ちゃん、目を覚まさないよー!」
「おそらく海水を大量に飲み込んだんだろう」
磯彦は人工呼吸の要領で、サダトの口から海水を吐き出させていた。
サダトが意識を取り戻したのは、船が陸に着く直前だった。
「なら、オレはこのまま有波先生んとこへサダ坊を連れてくからよう、流子を頼むわ」
「わかった。本家には病院から電話入れるようにな。皆、心配してるはずだから」
磯彦は黙ってうなずくと、サダトをおぶって、漁港に駐車してあった軽トラに乗り込み、約3キロ先の有波病院に直行した。
流子は源汰に手を引かれ、心配そうに見送っていた。
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「ああ…、磯彦さん、そう心配はないようじゃ。外傷はいくつもあったが、おそらく魚が接触した擦り傷とアザじゃろ。まあ、経過は看る必要はあるが、このまま大岬におるんなら、何かあれば連れてきなさい。ただし、あの子が埼玉の家にもどったら、念のため、あっちの大きい病院に診せた方がいい」
「わかりました。ふう‥、しかし、よかった。もう少し遅かったら浦潮に持って行かれてましたよ」
「うむ…、やはり大岬の潮は怖いのう…。それで…、あの子の服を脱がせて気づいたんだが、どうやら射精したようだ」
「???」
勝彦はすぐにはこの老医師の言っている意味が読み取れなかった。
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