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遠き記憶を染める色【完結】
第11章 彼が帰ってきた
「…もしもし、流子ちゃん?」


「サダト兄ちゃん…、ええと‥、お帰りなさい!ハハハ…」


「ああ、ただいま。…合宿中なのに、わざわざ連絡してくれたんだ…」


「へへ…、何しろ元気な声だけでも聞いとかないと。やっぱ、心配してたから…」


流子は、さりげなく一番の気がかりを慮っていたようだ。


***


「うん…、メールとかラインばかりで、なかなか電話できなかったからね…。とにかく元気だから…。今、えらいごちそうを目の前に楽しくやってる。海子おばさんや鮎男さんも集まってくれて、歓迎してもらってさ。早速、海に落っこちた時の話で盛り上がってたところだよ」


「そう…。私はあさっての早朝、戻るから。会ったらゆっくりね、お兄ちゃん!」


「あっ、そうそう…。バスタへはオレが車で迎えに行くよ」


「本当!じゃあ、部活仲間に捕まっちゃうな。サイン覚悟しといて(笑)」


「了解!気をつけて帰ってきてね、流子ちゃん…」


「うん!サダト兄ちゃん、今夜はゆっくりみんなと楽しんで」


二人の会話は弾けるようだった。


やはり、芸能人の仕事ということで、スマホからの電話一本でも何かと気を使い、どうしてもじっくりとは話せないでいた。
なので、今夜のリラックスした一声を聞けただけでも、流子にとっては4年間の空白がすっぽりと埋めることのできた充足感と安心感に浸れた。


***


翌日からの2日間、流子は水泳部の合宿に集中できた。
彼女は秋の大会予選に向た平泳ぎの100Mレースを想定して、数十本の往復をこなした。


「おお、潮田…、またタイムが上がったぞ!お前、この合宿で化けたか?アハハハ…」


「ハア、ハア…、先生、もう一本行きます。計って下さい!」


「よし!この上行ったら、我が○○高の記録も狙える。行け、潮田!」


「はい!」


”バシャーン…!!”


***


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