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遠き記憶を染める色【完結】
第13章 再会、そして抱擁
再会、そして抱擁



翌朝、流子たちを乗せたバスは、予定より20分以上早く大岬のバスターミナルに到着した。


「…流子、どうよ!カレ、来てるの?」


「うん…、ラインで早めに着きそうだって入れたら、もうバスタ来てるからって、今さっき返信あったから」


「そう!」


A子とB美はバスの車窓からさかんに目を配らせている。


「確か、○○ナンバーの黒いNボックスって聞いていたけど…。ああ…、アレだわ!」


流子が思わず”そこ”を指さすと、二人は窓側へ身を乗り出してその指先を追った…。


「わあ…!じゃあ、あの車の中に甲田サダトのホンモノがいる訳ね!」


「二人とも申し合せ通り頼むよ。彼は今日の午後、東京へ戻るんだから。時間取らせちゃ気の毒だよ」


流子はバスを降りる段になって、再度、念押しをした。


***


「大丈夫、承知よ。ふふ‥、流子と彼の時間を奪う野暮なマネはしないからさ」


「でさあ…、先生には言ってあるんだよね?」


「うん。最後のパーキング休憩ん時に話したから。みんなはうまく誘導するからって」


「よし!じゃあ、私たち二人は流子と一緒でいいんだね?」


流子はクスクス笑いながら頷いた。


”今までも親しい部活仲間として、何かと”相談”に乗ってくれたA子とB美だもん。やっぱ、こういうときくらいは”特別扱い”してあげなきゃね…”


事実、流子は血の繋がっていない親類であるサダトに恋心を抱いていることを、この二人にはかなり前から告げていた。
彼女らは、それを決して他人に明かしたりはせず、等身大ではあるが、部活仲間である流子の胸のうちに寄り添ってくれていたのだ。
その友情を流子は第一義と敷いていた。


***

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