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遠き記憶を染める色【完結】
第13章 再会、そして抱擁
午前5時15分…、大岬の○○高校水泳部と陸上部他、5セクションの合同夏季強化合宿参加者は房総最南端に帰郷した。
信州北部から一路約7時間を費やし、2台のバスは彼らを勢いよく、大岬バスターミナルへと吐き出した…。
”プップーーッ…!!”
2号車のタラップから降り、潮田流子が大岬の地を踏んだその瞬間、黒い他県ナンバーから迎砲が鳴った。
”お帰り…!”
流子にはそうとしか聞こえなかった。
合宿仲間は皆、そのクラクションの主を追っている…。
やがて、その車の運転席からは右手が飛び出した。
そして、顔も…。
”サダト兄ちゃん…!”
もう流子は頭の中の段取りがリセットし、気が付くと、彼の乗る黒いNボックスに全力で走っていった。
「流子‥!!」
「A子、行こう!」
「うん…!」
流子の全力疾走にA子とB美は続いた。
そして水泳部顧問のZ先生も…。
***
「サダト兄ちゃーん!」
「流子ちゃーん!」
サダトは車から降り、サングラス姿で流子に手を振っていた。
そして数秒後、二人はぶつかるように抱きあった。
「お帰り、流子ちゃん!」
「ただいま…」
流子の目はすでに潤んでいた。
”何て懐かしいの!サダト兄ちゃんのこの匂い、息遣い…。昔のままだ。嬉しい…”
***