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遠き記憶を染める色【完結】
第16章 海と水と彼のカラダ
海と水と彼のカラダ



流子の耳元には穏やかな早朝の波音が、何故か海の鼓動に聞こえた。
その”鼓動”と、今身を預けているサダトの鼓動が重なり合う感覚…。


”じゃあ、私の鼓動も重なり合わさらなきゃ…。この人とは愛し合い通せない…”


流子はここでもすんなり結論が導けてしまった。


「流子ちゃん、はっきり言うよ。…”あの人”との性交渉は水の中だった。それはオレとしてセックスが成立するか否かって意味だよ。だから、ベッドの中で不通に抱き合ったりはしてた。でも、ほとんどイケなかった…」


「!!!」


サダトの言葉…、いや告白は衝撃的ではあったが、”決意”に至った流子はどこかデジャブのようにも捉えられた。


”私の運命はここへ向かっていたのかも…。この大岬で生を受けた時から、決まっていたんだ、きっと…”


流子はそう自分自身に言い聞かせるように、心の中で呟いていた…。


***


「…サダト兄ちゃん、私とも水の中なのね?それ…、ここの海?浦潮の中?」


「…」


サダトには即、答えることができなかった。
そんな彼を流子は愛おしくてしょうがない。


「お兄ちゃん、私と一緒になろう…。行こう…」


流子はサダトの膝から半身を起こし、彼の両手を自身の両手で包み込むように握ると、愛しいオトコの目をじっと見つめながら小声ながら力強く居そう切り出した。


「流子ちゃん…」


二人はどちらともなく立ち上がると、靴と靴下を脱ぎ、手を繋いで波の中を歩いて行った。


「いいの?服着たままで…」


「そうしたい…」


流子は頷いた。
そしてそのまま、流子の胸下が海水が浸かる深さまで来て、二人は向き合った。


***

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