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遠き記憶を染める色【完結】
第21章 彼の部屋で
彼の部屋で



「サダ坊、またちょくちょく来いな。みんな、この大岬はサダ坊のふるさとだと思ってるしな」


「ハハハ、アニさんよう、サダ坊は売れっ子の芸能人なんだから、そうは来れんよ。なあ…」


ー一同笑ー


「とにかく、運転気をつけてね…」


「磯彦おじさん、おばあちゃん、みなさん…、今回は暖かく迎えてくれて感謝してます。ありがとうございました…」


”大岬のこの3日間…、温かかった…。オレは忘れない…”


その日の午後2時過ぎ…、サダトは潮田家の皆に見送られ、大岬を去った。


”サダト兄ちゃん、またね…。今度は東京で…”


流子とサダトの4年ぶりになる再会は、実質7時間足らずであった。
だが、流子にとってはデジャブの約束された濃縮の時…。
それに他ならなかったのだ。


***


その2週間後…、2学期を目前にした8月下旬の平日…。
あいにくの雨が降る中…、流子は都内にある”彼の部屋”を訪れた。


「…天気予報、外れだよね。小雨どころか台風じゃん、これ。ねえ…(苦笑)」


彼女は彼から渡されたタオルで、雨に濡れた服を拭っている。
あの時のように…。
だが、目線は芸能人のプライベートルームを、きょろきょろ見回しながらであったが…。


一方、サダトの目線は流子に吸い寄せられていた。


「全くだ…。会うたび、水拭いてる姿だ。でも、いい…」


「…」


流子は彼の瞳が何を語っているのか、何故か心にイメージが伝わった。


”私の体と水…。濡れてる私…、お兄ちゃんが見てるのは水…”


***


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