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遠き記憶を染める色【完結】
第22章 溶けあう心、重ならないカラダ
溶けあう心、重ならないカラダ



流子はサダトから受け取った、コンパクトなビニールケースに収まっているキーをじっと見下ろしていた。


「貸金庫には、潮田流子あての封筒がある。中身はUSBメモリーだよ。…入れてあるデータはまあ、手紙みたいなものさ」


サダトは微笑を浮かべ、さらっと言ったが…。
当然、流子にはなぜ手渡しではないのか…、それが引っかかった。


でも、どういった聞き方をすればいいか戸惑ってしまい、すぐに言葉が出なかったのだ。
そんな彼女を推し量ったように、サダトが笑顔のままで”説明”した。


***


「…要はキミには知っててもらいたいこと、見てもらいたいものなんだけど…。データは一度に入れたものじゃなくて、日記の写しとか、2年くらい前から直近まで…。で…、貸金庫に保管したのは、大岬で流子ちゃんに会った後だよ」


「!!!」


サダトのこの言葉に、流子は複数の意味で衝撃を受けた。


”概ね2年間って…、あの女優と付き合いだしてからこれまでってことでしょ。その間の日記なら、メールや電話で伝わらなかったお兄ちゃんのその時の気持ちや、本当のコトがリアルに記されてるはずだ。それをデータに収めて、私に渡そうと…。で、手渡しではなく、貸金庫に入れたのは私と会って、ああいうことになって…、その後なんだよ!これって…”


「…流子ちゃんが東京へ来るのわかってたから、ここでメモリーを受け取ってもらうことも考えたけど…。少なくとも、心の準備をしてもらった上で目にしてもらいたいものだと思ったんでさ…」


「わかったわ。今の補足、よくかみ砕いて、時期をみて受け取ります」


大げさに言えば、彼女としてはなまじりを決した思いであった。
彼女的にはサダトが自分に、その思いを単純に伝えるではなく託すという重みを感じ取ったのだ。


***


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