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遠き記憶を染める色【完結】
第33章 少女が願った手に入れたいもの
少女が願った手に入れたいもの



サダトの突然の死…。
流子の受けたショックは、まさに言語に絶するものがあっただろう。


”その日”は病院で点滴を受けた後、深夜には自宅へ戻ったが、食事は喉を通らず翌朝まで睡眠につくことができなかった。
結局、翌日は学校を休んだ。


しかし…。
その日、サダトの父親から流子の家に連絡が入り、家族に宛てた遺書らしき文書の中に、流子へ向けた文言も数行含まれていたことが伝えられた。
さっそく、文書は流子のパソコンにファイル送信され、彼女は昼過ぎに”彼からの言葉”を目にすることができたのだ。


”流子ちゃん、この決断に至った場合、貸金庫の中と二人の今まででどうかオレの気持ちを汲んでください。ありがとう。いずれまた一緒になろう”


サダトの残したこのメッセージで、流子は一気に自分のこれからを決めることができたのだ。
それは、ほぼ瞬時で…。


***


流子はその晩、両親には、サダトと愛し合っていたこと、海での抱擁と彼の部屋で体の関係も持ったこと、すべてを告白した。
その上で、彼から”託された”貸金庫の中に保管されているデータを、一緒に受け取りに行ってほしいと端的に告げたのだ。


無論、流子の父と母は驚きと動揺を隠せなかったが、サダトが自ら命を絶った遠因が9年前の大岬沖で潮に呑み込まれた、”あのほかでもない事件”にあったと知らされたこともあり、急遽、翌日に父の洋介が車で都内の当該銀行へ流子とともに赴くことになった。


この時点で、流子は既にパズルが完成したかのように、頭の中の整理がなされていた。
そして、TV報道を受けた世間の目はどこに向けられていて、世論がどう形成されていくか…、この辺りも彼女にはほぼ確信をもって予測がついたのだ。


”私、落ち込んでる場合じゃない。甲田サダトの尊厳を守ってあげるのよ!そのことで私たち二人は完全につながる…。世間の人たちの心の中でも、彼と私が永遠に生きていける。その為には、貸金庫の中を大至急手に入れて、それを以って、あの女を甲田サダトから排除してやる!”

***


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