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遠き記憶を染める色【完結】
第37章 ラストの矢
ラストの矢



その日…、テレビのワイドショーでは、一斉に流子がマスコミ寄せた手記の残りを”全文公開”した。
ポイントは、彼女が甲田サダトと互いの愛を告白しあったのは、4年前…、彼が芸能界にデビューする直前であったこと。
そして、その時初めてのキスを交わし、流子は彼の性癖を理解した…。


つまり、自分はサダトが年上の永島弓子と出会って付き合う前に、彼と愛し合っていたと、この時点で”追告白”したことになる。
マスコミ側には、流子の方からあらかじめ、公表する時期をずらすように申し入れていたのだ。


ここに流子の究極の狙いが隠されていたのではないか…。


***


”…サダトさんは私に、浦潮に引き込まれた体験で人の愛し方と自分が望む愛され方が劇的に変わったと、そう告白してくれました。それは、ひとつの愛では満たされないことを意味し、そのテッペンは海に捧げる愛だと。私には、一人の人間の男性として、守る立場で愛しいくつもりだと言ってくれました。それは当時、私がまだ中学1年生という年齢的なところを慮ってくれてた面があったったんだと、今からするとそう思えるのです”


”…従って、この時の彼にはもうひとつの愛され方が必要だったのでしょう。一旦海に還され、再び人間社会で生きる自分の、人とは違う性欲のカタチを理解し受け入れてくれる存在を…。おそらく年上で、その世界の大先輩である永島弓子さんには、そんな愛され方を求めていたと思います。でも、年下の私への愛も抱いたままだったはずです”


”…彼は永島さんには、そこの部分でどこか負い目もあって、自分をさらけ出しきれなかったのかもしれません。ですから、今の私は彼の通常では理解し難い内面の本当のところをファンの方たちに知ってもらい、その上で、永島さんとのお付き合いと決別の過程は事実を世間に認知してもらいたい気持ちでした。そこで、こういった行為に出て、私の知りえることを公にした次第です”


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