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異邦人の庭 〜secret garden〜
第1章 アンジェラの初戀
今朝、政彦は朝食の席で済まなそうに言った。
「本当は僕も行けたら良かったんだけど…。
今日の接待はどうしても外せなくてね…」
迎えのハイヤーがそろそろ到着する。
政彦はもう間もなく出なくてはならなかった。
「大丈夫ですわ。
大切なお仕事ですもの。気にせず行ってらして。
高遠のお祖母様には貴方の代わりに私と紗耶ちゃんできちんとご挨拶してまいります」
…高遠のお祖母様にご挨拶…と聞いて、紗耶は朝食のパンケーキが喉に通らなくなってしまった。
それを察した紫織が優しく頭を撫でる。
「紗耶ちゃん。大丈夫よ。お母様が付いていますからね。
お話出来なくても気にしなくて良いのよ」
「紗耶、お母様に任せておけば大丈夫だからね」
政彦も紗耶の頬を優しく突いた。
…お父様もお母様も優しい…。
私がほかの親戚の子どものように、はきはきとご挨拶できなくても決してがっかりなどなさらない。
…だから、なおさら自分が情けなくなるのだ…。
政彦が立ち上がりながら、思いついたように告げた。
「…そうだ。
千晴に会ったら、よろしく言っておいてくれ。
暇があったらうちに寄るように。
大学の入学祝いを渡したいからね」
紫織は政彦に上着を着せると頷いた。
「分かりましたわ。
…近いうちに千晴さんをお招きして、お祝いのお食事会でもいたしましょうね」
そうして、にこやかに紗耶を振り返った。
「さあ、紗耶ちゃん。お仕度しましょうか。
お母様はお父様をお見送りするから、先にお部屋に行っていてね」
紫織の白く美しい手とブラウスからは、爽やかな…けれどどこか神秘的なティーツリーの精油が仄かに薫った。
「本当は僕も行けたら良かったんだけど…。
今日の接待はどうしても外せなくてね…」
迎えのハイヤーがそろそろ到着する。
政彦はもう間もなく出なくてはならなかった。
「大丈夫ですわ。
大切なお仕事ですもの。気にせず行ってらして。
高遠のお祖母様には貴方の代わりに私と紗耶ちゃんできちんとご挨拶してまいります」
…高遠のお祖母様にご挨拶…と聞いて、紗耶は朝食のパンケーキが喉に通らなくなってしまった。
それを察した紫織が優しく頭を撫でる。
「紗耶ちゃん。大丈夫よ。お母様が付いていますからね。
お話出来なくても気にしなくて良いのよ」
「紗耶、お母様に任せておけば大丈夫だからね」
政彦も紗耶の頬を優しく突いた。
…お父様もお母様も優しい…。
私がほかの親戚の子どものように、はきはきとご挨拶できなくても決してがっかりなどなさらない。
…だから、なおさら自分が情けなくなるのだ…。
政彦が立ち上がりながら、思いついたように告げた。
「…そうだ。
千晴に会ったら、よろしく言っておいてくれ。
暇があったらうちに寄るように。
大学の入学祝いを渡したいからね」
紫織は政彦に上着を着せると頷いた。
「分かりましたわ。
…近いうちに千晴さんをお招きして、お祝いのお食事会でもいたしましょうね」
そうして、にこやかに紗耶を振り返った。
「さあ、紗耶ちゃん。お仕度しましょうか。
お母様はお父様をお見送りするから、先にお部屋に行っていてね」
紫織の白く美しい手とブラウスからは、爽やかな…けれどどこか神秘的なティーツリーの精油が仄かに薫った。