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第1章 アンジェラの初戀

…つまり、「高遠様の千晴お兄ちゃま」は紗耶にとっては特別な…そして、雲の上のような人なのだ。
その彼が、紗耶の窮地を救ってくれた。
アリスを助けてくれた。
その千晴が紗耶の眼の前で跪き、にっこりと笑う。
「紗耶ちゃん。大きくなったね。
この前見た時は…まだ幼稚舎だったね」
驚きのあまり口も聞けない紗耶を気にする風もなく、気さくに話しかけてくれる。

…千晴はそうして、その大きな美しい手を紗耶に差し伸べた。
「さあ、お母様のところに一緒に行こう。
僕が連れて行ってあげる」

紗耶は、しばらくその手をじっと見つめていたが、やがておずおずと小さな手を伸ばし、青年の手を取った。