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異邦人の庭 〜secret garden〜
第1章 アンジェラの初戀
紫織の父親は大手商社の取締役員のひとりであった。
裕福な家ではあったが、そして評判の美貌を誇る娘ではあったが、ごく普通の会社員の娘である紫織を、政彦の元に嫁がせることに積極的だったのには訳がある。
二宮政彦は大手メガバンクの経営戦略室の室長であり…何よりあの高遠家の親戚であったからだ。
「高遠家といえば、近代日本史にも名前が登場するような元華族の家柄の上、今でも都内有数の不動産を持つ大変な資産家。
しかもすべてを牛耳っているのはゴッドマザーと呼ばれている女主人らしい。
なかなかに複雑な…けれど歴史と伝統と因習に満ちた家のようだ。
実に興味深いではないか。
政彦くんはその高遠家と親戚関係にある。
こんな良縁は滅多にあるものではない。
これから物を言うのは、海千山千の成金ではなく、由緒正しき家柄だ。
…今や失われし名声や栄光の家名を、日本人は何より崇拝し憧憬するのだ。
…それに…女は乞われて嫁ぐのが何よりの幸せだよ」
そう父親に説き伏され、紫織は政彦のプロポーズを受けた。
…もっとも留学を諦める代わりに、二宮の自宅の離れにアロマ研究のためのラボを作ることと、これから紫織がアロマテラピーの教室を立ち上げる際の金銭的援助を惜しみなく与えることを条件に…であったが…。
裕福な家ではあったが、そして評判の美貌を誇る娘ではあったが、ごく普通の会社員の娘である紫織を、政彦の元に嫁がせることに積極的だったのには訳がある。
二宮政彦は大手メガバンクの経営戦略室の室長であり…何よりあの高遠家の親戚であったからだ。
「高遠家といえば、近代日本史にも名前が登場するような元華族の家柄の上、今でも都内有数の不動産を持つ大変な資産家。
しかもすべてを牛耳っているのはゴッドマザーと呼ばれている女主人らしい。
なかなかに複雑な…けれど歴史と伝統と因習に満ちた家のようだ。
実に興味深いではないか。
政彦くんはその高遠家と親戚関係にある。
こんな良縁は滅多にあるものではない。
これから物を言うのは、海千山千の成金ではなく、由緒正しき家柄だ。
…今や失われし名声や栄光の家名を、日本人は何より崇拝し憧憬するのだ。
…それに…女は乞われて嫁ぐのが何よりの幸せだよ」
そう父親に説き伏され、紫織は政彦のプロポーズを受けた。
…もっとも留学を諦める代わりに、二宮の自宅の離れにアロマ研究のためのラボを作ることと、これから紫織がアロマテラピーの教室を立ち上げる際の金銭的援助を惜しみなく与えることを条件に…であったが…。