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異邦人の庭 〜secret garden〜
第5章 ペニー・レーンの片想い
アフタヌーンティーは、いつも千晴と紗耶が食事をするパーゴラではなく、セント・セシリアとローラ・ダボーが咲き誇るこじんまりしたパーゴラの下で和やかに行われた。

ディープカップ咲きの大輪の淡いアプリコットピンクのセント・セシリアからはミルラの艶やかな薫りが、優しく漂う。
低めのパーゴラはまるで吹き抜けがある小さな部屋のようだ。

料理人の民が腕を振るったスコーンにはブラッシュダマスクの薔薇のローズジャムと濃いクロテッドクリームがたっぷり添えられていた。
サンドイッチは胡瓜、クリームチーズとスモークサーモン、ニシンの酢漬け、そしてプチタルトはローズジャムを練りこんだクリームを載せた苺とブルーベリーと、ショコラの二種類だ。
イートンメス…イギリスのパブリックスクールのイートン校にちなんだ焼きメレンゲと生クリーム、苺のお菓子にもローズシロップがかけられている。

お茶は千晴の好みで紅茶のシャンパンと呼ばれるダージリンが定番なのだが、最近、紗耶がミルクティー好きだと言うことが分かり、紗耶にはミルクティーを用意するように家政婦の八重に申し付けてくれていた。
だから紗耶の紅茶はアッサムかディンブラだ。
…けれど今日はお茶を楽しむのもそこそこに、紗耶は紫織とのお喋りに夢中になった。

「紗耶ちゃん、大学は楽しい?」
「すごく楽しいわ。
あのね、お母様。私ね、サークルに入ったの」
「まあ、サークルに?どんなサークルなの?」
「弦楽サークルよ。でもね、弾くのはロックなの。
私もロックの曲にチャレンジするのよ」
「まあ、ロック?」
紫織が美しい瞳を見開いて驚いた。
そうして、にこにこと二人の話をきいている千晴を見上げる。
「…なんだか、私の知っている紗耶ちゃんじゃないみたいだわ」
「僕もロックと聴いて驚いたけれど、いいんじゃないかな。
音楽は本来自由であるべきものだからね」
…ただ…
と、端整な眉を少し寄せて、両手を広げてみせた。
「なかなかユニークな青年たちがたくさんのサークルみたいでね…。
そんな中に紗耶ちゃんがいるかと思うと、心配だけれど…」

紫織がしみじみとした口調で、千晴に微笑みかけた。

「…紗耶を大切にしてくださっているのね…。千晴さん…。
嬉しいわ…」
「…紫織さん…。
もちろんだよ。紗耶ちゃんは僕の大切な宝物だ」

…二人の間に濃密な空気が流れる。









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