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異邦人の庭 〜secret garden〜
第1章 アンジェラの初戀
千晴の手は大きくしなやかで、ひんやりとしていた。
…仄かに薫るのは、ティーツリーと…それから微かなシダーウッドだろうか…。
父親や祖父とはよく手を繋ぐが、ほかの男性と手を繋いだのは初めてだ。
紗耶は緊張のあまり手が悴むような…消え入りたいような気持ちに襲われた。
同時に、こんな愚図な手のかかる子どもに関わって、千晴はうんざりしているのではないかとの疑問が頭を掠め、紗耶を更に不安にさせた。
…が…
「…紗耶ちゃん、偉かったね」
…聞こえてきたのは、優しい言葉であった。
「…え?」
思わず見上げると、初夏の木漏れ日のもと、千晴が端整な眼差しで笑っていた。
「華子ちゃんにちゃんと抗議してた」
「…あ…」
…お兄ちゃま…見ていたんだ…。
かっと全身が火照るような恥ずかしさに包まれる。
思わず手を離して逃げ出したくなる衝動に駆られる紗耶の手を、千晴はさりげなく握り直した。
「…紗耶ちゃんは偉いよ。
逃げなかった。諦めなかった。
年上の…意地悪な華子ちゃんに立ち向かった」
「…だって…」
自然に口が開いた。
「うん?」
千晴が優しく見つめている。
「…アリスは…大切な…お友達だから…」
微かな声を、千晴は聞き取ってくれたようだ。
「…うん。
アリスはきっと、ありがとうって言ってるよ」
「…千晴…お兄ちゃま…」
…こんなに、自分の気持ちを理解してもらえたのは初めてだった。
繋いだ手のひらから、じんわりと伝わるのは、体温と…それから…。
「…あの…」
…もう一度、ありがとうと言おう…。
口を開きかけたその時…。
薔薇園の入り口…アンジェラのアーチの向こうから、ひとりの美しい女性が妖精のようにふわりと現れた。
千晴がすぐさま眩しげに瞳を細め、柔らかく…少し不思議な表情を浮かべて微笑んだ。
「…お母様だよ、紗耶ちゃん…」
…仄かに薫るのは、ティーツリーと…それから微かなシダーウッドだろうか…。
父親や祖父とはよく手を繋ぐが、ほかの男性と手を繋いだのは初めてだ。
紗耶は緊張のあまり手が悴むような…消え入りたいような気持ちに襲われた。
同時に、こんな愚図な手のかかる子どもに関わって、千晴はうんざりしているのではないかとの疑問が頭を掠め、紗耶を更に不安にさせた。
…が…
「…紗耶ちゃん、偉かったね」
…聞こえてきたのは、優しい言葉であった。
「…え?」
思わず見上げると、初夏の木漏れ日のもと、千晴が端整な眼差しで笑っていた。
「華子ちゃんにちゃんと抗議してた」
「…あ…」
…お兄ちゃま…見ていたんだ…。
かっと全身が火照るような恥ずかしさに包まれる。
思わず手を離して逃げ出したくなる衝動に駆られる紗耶の手を、千晴はさりげなく握り直した。
「…紗耶ちゃんは偉いよ。
逃げなかった。諦めなかった。
年上の…意地悪な華子ちゃんに立ち向かった」
「…だって…」
自然に口が開いた。
「うん?」
千晴が優しく見つめている。
「…アリスは…大切な…お友達だから…」
微かな声を、千晴は聞き取ってくれたようだ。
「…うん。
アリスはきっと、ありがとうって言ってるよ」
「…千晴…お兄ちゃま…」
…こんなに、自分の気持ちを理解してもらえたのは初めてだった。
繋いだ手のひらから、じんわりと伝わるのは、体温と…それから…。
「…あの…」
…もう一度、ありがとうと言おう…。
口を開きかけたその時…。
薔薇園の入り口…アンジェラのアーチの向こうから、ひとりの美しい女性が妖精のようにふわりと現れた。
千晴がすぐさま眩しげに瞳を細め、柔らかく…少し不思議な表情を浮かべて微笑んだ。
「…お母様だよ、紗耶ちゃん…」