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異邦人の庭 〜secret garden〜
第5章 ペニー・レーンの片想い
テーブルには素早く徳子の席が設けられ、徳子愛用のウェッジウッドの茶器が運ばれる。
かつて若い頃、英国滞在時に亡きエリザベス皇太后から下賜された記念の茶器を、徳子は惜しげも無く普段使いしているのだ。

薫り高いダージリンを千晴自ら淹れながら、徳子に微笑む。
「お祖母様、軽井沢はいかがでしたか?
少しお寒かったのではないですか?」

千晴は女性全般に優しいが、特に徳子には最大限の敬意を払い恭しく接している。
それはまだ三歳の時に、両親を海外旅行中の不慮の死により亡くした千晴の親代わりに徳子がなり、手塩にかけて千晴を育てたからだ。
徳子に弱点があるとすれば、それは千晴だけだった。
それくらい、眼の中に入れても痛くないほどに千晴を可愛がっている徳子なのだ。

千晴も徳子には恩と…何よりも深い愛情を感じている。
それは、獅子のように恐ろしいと言われている祖母の…意外なほどの情の深さや優しさを身をもって知っているからに他ならないからだ。

「今年はそうでもなかったわ。
軽井沢にも温暖化の影響が近づいている感じね」
美しい所作でダージリンを口に運ぶ。
卵型の白い肌には殆ど皺もなく、どう見ても五十代後半くらい…しかも若々しい五十代に…だ。
その年齢不詳じみた若々しさと美しさも徳子を尚更に魔女めいて見せるのだ。

「すみれ会はいかがでしたか?何か面白いお話などはありましたか?」
徳子は日本人離れした仕草で肩を竦めてみせた。
幼少期を外交官の父親について英国、インド、上海、スイスとさまざまな海外で過ごした徳子は時折外国人のような仕草が現れてしまうのだ。

「相変わらずよ。
旧華族や旧財閥の婦人会なんて退屈で見栄の張り合いばかり。
あとはゴシップ話…。
…内親王様のフィアンセがどうのこうの…て。
自分のことでもないのによくも熱心になれるものよね」
そして、ゆるりと紗耶と紫織を見遣り、眼を細めた。
「…そう言えば、紗耶さんのことをよく尋ねられたわ。
千晴さんと紗耶さんの婚約式はいつなのかしら?とね」

いきなり自分に話の矛先が向き、紗耶は危うくお茶を零しそうになる。

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