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異邦人の庭 〜secret garden〜
第5章 ペニー・レーンの片想い
「…あの…私…」
しどろもどろの紗耶に代わり、千晴が微笑みながら口を開く。
「お祖母様。僕は紗耶ちゃんが大学を卒業するまで、このままで良いと思っているのですよ。
紗耶ちゃんには自由に大学生活を謳歌してもらいたいのです。
普通の女の子として、普通の学生として…。
大学生活の四年間でたくさん成長して欲しい。
そうして、改めて僕との結婚を決意して欲しいのです」
千晴の大きく美しい手が、紗耶の小さく白い手に優しく重なる。
…大丈夫だよ…と言うように軽く握られ、紗耶はほっと息を吐く。
千晴のことは大好きだが、大学に通いながら婚約式をして結婚への一歩を踏み出すには、まだ大きな勇気が必要だったからだ。
…それに…
紗耶には乗り越えなくてはならない壁がある…。
徳子が大仰に首を振った。
「まあまあ、千晴さんの甘いこと…。
私が旦那様と婚約したのは十七でしたよ。
当時私はスイスのフィニッシングスクールに通っていて寄宿舎に入っていたの。
それはそれは楽しい学校でね。まだまだ勉強したり遊んでいたかったのに、お義母様にすぐに高遠の家に入るように言われて…まあ、こんなことを話しては年寄りの愚痴になるだけね」
…それはそうと…と、形の良い細い眉を跳ね上げ、徳子は紫織の方を向き直る。
「貴女はどうお考え?紫織さん。
紗耶さんは直ぐにでも千晴さんと婚約すべきとお考えかしら?」
しどろもどろの紗耶に代わり、千晴が微笑みながら口を開く。
「お祖母様。僕は紗耶ちゃんが大学を卒業するまで、このままで良いと思っているのですよ。
紗耶ちゃんには自由に大学生活を謳歌してもらいたいのです。
普通の女の子として、普通の学生として…。
大学生活の四年間でたくさん成長して欲しい。
そうして、改めて僕との結婚を決意して欲しいのです」
千晴の大きく美しい手が、紗耶の小さく白い手に優しく重なる。
…大丈夫だよ…と言うように軽く握られ、紗耶はほっと息を吐く。
千晴のことは大好きだが、大学に通いながら婚約式をして結婚への一歩を踏み出すには、まだ大きな勇気が必要だったからだ。
…それに…
紗耶には乗り越えなくてはならない壁がある…。
徳子が大仰に首を振った。
「まあまあ、千晴さんの甘いこと…。
私が旦那様と婚約したのは十七でしたよ。
当時私はスイスのフィニッシングスクールに通っていて寄宿舎に入っていたの。
それはそれは楽しい学校でね。まだまだ勉強したり遊んでいたかったのに、お義母様にすぐに高遠の家に入るように言われて…まあ、こんなことを話しては年寄りの愚痴になるだけね」
…それはそうと…と、形の良い細い眉を跳ね上げ、徳子は紫織の方を向き直る。
「貴女はどうお考え?紫織さん。
紗耶さんは直ぐにでも千晴さんと婚約すべきとお考えかしら?」