この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第5章 ペニー・レーンの片想い
お茶会がお開きになり、帰る紫織を紗耶は千晴とともに玄関まで送った。

「お母様、本当にもうお帰りになるの?
お父様が出張なら、もっとゆっくりしてらしてもいいのに…」
別れがたくて引き止める 。
紗耶は紫織が大好きだ。
紫織がそばにいると、無条件で安心するのだ。
それは幼い頃からの刷り込みであった。

紫織はふわりと優しく微笑み、紗耶の髪を撫でた。
「…明日はアロマのお教室のワークショップがあるし、準備をしなくてはね。
紗耶ちゃん、お父様にメールを差し上げて。
貴女に会えなくて寂しがっていらしたわ」
紗耶は素直に頷く。
優しい政彦も紗耶は大好きだ。
政彦にも会いたいな…と思う。
「分かったわ」

紫織の白く細い指が紗耶の頰をそっとなぞる。
「…千晴さんに、たくさん可愛がっていただきなさい」
囁くように言われ、紗耶の頰は熱くなる。
…なんだか、その言葉が艶めいて聞こえたからだ。
「…お母様…」

千晴を見上げ、紫織は静かに微笑む。
「…千晴さん。紗耶を、よろしくお願いいたします」
「もちろんです。
貴女の大切な紗耶ちゃんを僕は必ず幸せにします。
紗耶ちゃんは僕の宝物ですから…」
…身体がきゅっと縮こまりそうになるほどに嬉しい言葉…。
…でも…。
身代わりなのだ…。私は…。
お母様の…。

幸福な気持ちが風船が萎むように小さくなる。

「…紗耶は幸せですわ。千晴さんにそんなにも大切にされて…。
良かったわね、紗耶ちゃん…」
…千晴が紫織を愛していることを、紗耶が知っていると、紫織は知らない。
だから、そんな風に笑えるのだろう。
…けれど…。
紗耶は思う。
…お母様は、千晴お兄ちゃまを、どう思っていらっしゃるのかしら…。
その美しい唇から、愛の言葉は語られてはいないけれども…。

紫織を乗せたハイヤーが遠ざかるのをぼんやり見つめていると、背後から不意打ちのように抱き竦められた。
「千晴お兄ちゃま…?」
千晴は紗耶の髪に貌を埋める。
「…紗耶ちゃんは、どこにもいかないよね?
ずっと、僕とここにいるよね?」
熱い吐息がうなじにかかる。
甘美な痺れに、身体が震える。
「…あ…」
そのまま、男の胸に抱き込まれる。
「…紗耶ちゃん…僕は…」

…けれど、その先は…

「失礼いたします。紗耶様。大奥様がお呼びです」

徳子付きの侍女の七重によって無機質に遮られたのだ。






/789ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ